会社の帰り道――貴女が目にしたのは、赤信号が灯る中、道路に飛び出した子猫!?
更には、そこに突っ込んでくる一台の車――
咄嗟に走り出した貴女は子猫をかばうように抱え、その体を丸めました。
更には、そこに突っ込んでくる一台の車――
咄嗟に走り出した貴女は子猫をかばうように抱え、その体を丸めました。
キキキキーーーッ、ドンッ!
急ブレーキの音、体に駆け巡る衝撃――
それが貴女の最期の記憶となったのでした。
それが貴女の最期の記憶となったのでした。
――次に目が覚めると、何故だかここは現実の世界ではないのだと悟りました。
誰かをもてなすための一室でしょうか…赤を基調とした中華風の豪華な内装。
目の前には書類や巻物が積まれた大仰な化粧机と鈍く輝く怪しげな鏡。
そして玉座に座り頬杖をつきながら、威圧的に貴女を見る大柄な男。
宝玉を散りばめたいくつもの簪(かんざし)付きの冠に、みごとな金糸の刺繍をあしらった高価な着物を羽織りつつも、その胸元を大きく開けて着崩すという大胆な横柄さの中に、どこか色気さえ感じさせるような風貌の男は、大きくため息をついて口を開きました。
誰かをもてなすための一室でしょうか…赤を基調とした中華風の豪華な内装。
目の前には書類や巻物が積まれた大仰な化粧机と鈍く輝く怪しげな鏡。
そして玉座に座り頬杖をつきながら、威圧的に貴女を見る大柄な男。
宝玉を散りばめたいくつもの簪(かんざし)付きの冠に、みごとな金糸の刺繍をあしらった高価な着物を羽織りつつも、その胸元を大きく開けて着崩すという大胆な横柄さの中に、どこか色気さえ感じさせるような風貌の男は、大きくため息をついて口を開きました。
「……名前」
自分の立場が分からないまま、貴女がおそるおそる自分の名を伝えると、カレの眉がピクリと動きました。
漸くカレが顔をあげ、貴女の顔を見定めます。
しばらくして何かに興味を持ったのか、カレは、少しだけその口角をあげながら身を乗り出しました。
漸くカレが顔をあげ、貴女の顔を見定めます。
しばらくして何かに興味を持ったのか、カレは、少しだけその口角をあげながら身を乗り出しました。
「オマエはさっき死んで、ここはメイカイだ。そしてオレはここの責任者のエン。オマエの前世の所業を見て裁きを判ずる――ってなカンジだが、、、オレの言ってること、わかるか?」
「前世の行い」と聞いて貴女はハッとし、思わずカレに向かい「助けた子猫は無事なのでしょうか?」と問いました。
ほんのわずか、カレの目が見開き、そして机上の光る鏡をのぞき込みながら「――あぁ、子猫は無事に母猫の元に戻ったみたいだな」と告げたことで、貴女はホッと胸を撫で下ろします。
ほんのわずか、カレの目が見開き、そして机上の光る鏡をのぞき込みながら「――あぁ、子猫は無事に母猫の元に戻ったみたいだな」と告げたことで、貴女はホッと胸を撫で下ろします。
それから暫くして、それまで目を通していた巻物を後ろにぽいっと放り投げると、カレは貴女に向き合い、いくつもの質問をしました。
中には少し意地悪な質問もありましたが、貴女は真摯に、そして全て正直に答えました。
質問の最中、カレは時折眉を寄せ、苦しそうな、そしてどこか悲しそうな表情を見せることがありました。
その理由が何故なのか、貴女には分かりません。
ただ、質問を重ねるごとに垣間見ることができたカレのとても優しそうな微笑みに、貴女の心は少し高鳴り、そしてその頬にほんのり紅が差すのを感じました。
中には少し意地悪な質問もありましたが、貴女は真摯に、そして全て正直に答えました。
質問の最中、カレは時折眉を寄せ、苦しそうな、そしてどこか悲しそうな表情を見せることがありました。
その理由が何故なのか、貴女には分かりません。
ただ、質問を重ねるごとに垣間見ることができたカレのとても優しそうな微笑みに、貴女の心は少し高鳴り、そしてその頬にほんのり紅が差すのを感じました。
――どれくらいの時間が経ったのでしょうか、冥界だから時間の感覚もありません。
カタチのないはずの体に重くのしかかるような徒労感を覚えた頃、カレの目がイキイキと輝いていることに気づきました。
今でこそ横柄な態度で、人をぞんざいに扱い、仕事も半ば投げやりにこなしていたカレですが――元々は人を深く愛し、その裁きも厳格ながらにしてとても平等なものでした。
しかし人が自らの罪を隠そうとするあまり、その狡猾さ、傲慢さ、欲深さに触れ続けることで、これに辟易とし、やがてその心を深く閉ざすようになってしまったのです。
(これが自分が深く愛した人間というものの本性なのだろうか? もし、そうであるのなら、もうこれ以上、醜いものは見たくない)
まともに相手にせねば、必要以上に失望することも落胆することもない――。
そうするうちに、次第に裁きもおおざっぱで、ことさら厳しく投げやりなものとなってしまっていたのです。
カタチのないはずの体に重くのしかかるような徒労感を覚えた頃、カレの目がイキイキと輝いていることに気づきました。
今でこそ横柄な態度で、人をぞんざいに扱い、仕事も半ば投げやりにこなしていたカレですが――元々は人を深く愛し、その裁きも厳格ながらにしてとても平等なものでした。
しかし人が自らの罪を隠そうとするあまり、その狡猾さ、傲慢さ、欲深さに触れ続けることで、これに辟易とし、やがてその心を深く閉ざすようになってしまったのです。
(これが自分が深く愛した人間というものの本性なのだろうか? もし、そうであるのなら、もうこれ以上、醜いものは見たくない)
まともに相手にせねば、必要以上に失望することも落胆することもない――。
そうするうちに、次第に裁きもおおざっぱで、ことさら厳しく投げやりなものとなってしまっていたのです。
――そんな折、突然目の前に現れた貴女。
最初は、いつも通りの適当なやり取りを済ませて、さっくりと奈落の底にでも送ってしまおうか…と思っていました。
しかし、貴女と話していく中で、カレは自らの胸が高鳴り、心が躍り始めていることに気が付きました。
そう、これがオレの愛した人間の姿だ!
子猫のために命を落としたことを、嘆くどころか、助かった小さな命に大喜びし、そして「ならば悔いはない」と凛と言い放つ潔い佇まい。
その気高さ、美しい魂が放つ明光に触れ、心の奥底からふつふつと湧きあがるアツい感情に歓喜しました。
最初は、いつも通りの適当なやり取りを済ませて、さっくりと奈落の底にでも送ってしまおうか…と思っていました。
しかし、貴女と話していく中で、カレは自らの胸が高鳴り、心が躍り始めていることに気が付きました。
そう、これがオレの愛した人間の姿だ!
子猫のために命を落としたことを、嘆くどころか、助かった小さな命に大喜びし、そして「ならば悔いはない」と凛と言い放つ潔い佇まい。
その気高さ、美しい魂が放つ明光に触れ、心の奥底からふつふつと湧きあがるアツい感情に歓喜しました。
――このオンナが欲しい…。
それは冥界の最高神という立場を超えた、一人の「オトコ」としての欲情でした。
このままいけば、間違いなく彼女は「お天道サマ」行き。
しかるべき慰労、褒章を得た後、さらなる転生をもって、再び尊き「生」を持つ人間として命を受けるはず。
しかしそうなれば、オレがこのオンナと会うことは、もう二度とない。
――そうはさせまい、何がなんでもオレのモノにしてみせる!
そんな決意を胸に、カレはゆっくりと貴女にその手を差し伸べます。
そしてまた、少し意地悪そうに口角を上げながら、こう囁くのでした――
それは冥界の最高神という立場を超えた、一人の「オトコ」としての欲情でした。
このままいけば、間違いなく彼女は「お天道サマ」行き。
しかるべき慰労、褒章を得た後、さらなる転生をもって、再び尊き「生」を持つ人間として命を受けるはず。
しかしそうなれば、オレがこのオンナと会うことは、もう二度とない。
――そうはさせまい、何がなんでもオレのモノにしてみせる!
そんな決意を胸に、カレはゆっくりと貴女にその手を差し伸べます。
そしてまた、少し意地悪そうに口角を上げながら、こう囁くのでした――
「この手を取れ――そうすれば……」
――この続きは本編で♥
